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2009/11/06

No.84 : 文化の日によせて

11月3日は文化の日であった。
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』によれば
「文化の日(ぶんかのひ)は、日本の国民の祝日の一つで、日付は11月3日である。国民の祝日に関する法律(以下「祝日法」)では『自由と平和を愛し、文化をすすめる』ことを趣旨としている」というが、「すすめる」とは曖昧な表現で感心しない。
この日皇居では文化勲章の授与式が行われる。また、この日を中心に、文化庁主催による芸術祭が開催される。…
この日は晴天になる確率が高く、「晴れの特異日」として有名である。…とあった。
旗日であるが、近くのターミナル駅まで出かけたが、いつも見かける交番にも日章旗を見ることは出来なかった。

ところで、「文化」とは私にとって難しい言葉である。疑問に思うことが多く、このブログのNo.29(2005.11.03)に「文化の日に思う」と題して私の理解を纏めて掲載した。先日読み返したがいまも、それ以上の理解は出来ていない。やむを得ず、そのまま再度ここに引用することにした。

毎年「文化の日」を迎えて思う事がある。香り高い菊の季節の行事であるだけに、「文化」といえば文学、音楽、絵画、宗教その他の、人間の精神活動で生み出された作品が思い浮かぶ。しかし文化勲章授賞者には自然科学分野で業績を挙げた人達もおられ、文化という言葉の幅の広さを感じる。

たまたま、「言葉と文化」(鈴木孝夫著)という本を読んでいたら、私のような狭い解釈の誤解に触れ、「…しかし私がこの本で『文化』と称するものは、ある人間集団に特有の、親から子へ、祖先から子孫へと伝承されていく行動、思考様式上の固有の型『構図』のことである」とあり、更に、「文化とは人間の行動を支配する諸原理の中から、本能的で生得的なものを除いた残りのもの、伝承性の強い社会的強制(習慣)の部分をさす概念である」と言い替え、「文化をこのようなものとして捉えることは、今や言語学や人類学の領域では常識となっている」というのであった。

確かに、こういう文化があることは理解出来る。食は文化であり、学校教育は文化を教えているという表現もあり、思い当たるところであった。
しかし、まだ理解出来ないのが文化勲章の文化である。勿論、新聞は文化の日に当たり、「芸術や科学、伝統芸能など、『文化』のさまざまな分野で…」と解説している。では科学は、文化の代表格の芸術と同格であろうか?

「辞苑」(新村 出、昭和15年版)は「文化とは、人類の本来所有する理想を実現してゆく人間活動の過程。芸術・道徳・宗教を初めとし国家・法制、経済等のすべてはその所産である。文明が一般に外的・物質的発展を意味するに対し文化は内面的、精神的なものを意味する」とある。この表現は私を納得させる。

しかし「国語辞典(昭和58年版)」は「文化とは、人類の理想を実現してゆく精神の活動。技術を通して自然を人間の生活目的に役立てて行く過程で形成された生活様式およびそれに関する表現」とある。「技術を通して…」という表現が新しいが、疑問が残る。

ここまで書いてきてメモを整理していたら、「新世紀大辞典(1968年)」の「文化」が見つかった。
新世紀大辞典では「文化とは人類のあらゆる時代を通じ、人間が自然に働きかけることによって、自らも自然状態から脱して作り出して来た物質的、精神的な一切の成果」。
但し「フンボルト(*1)以来、物質的文化を『文明』といい、精神的文化を『文化』と呼び分けることが多い。ちなみに、文明とは『生活、特に衣食住のための技術・秩序が改善された状態、物質面において人間生活が発展した状態』とある。

私が小学校で初めて教わった「文明」は「文明の利器」という表現であったがこの文明はフンボルトの分類に従ったものといえよう。「辞苑」の文化もこれである。
(*1):ドイツの言語学者であり、政治学者であり、文人でもあったヴィルヘルム・フォン・フンボルト(1767~1835)

今日政府が用いている「文化」の定義は、フンボルト以前の、よりオーソドックスな、精神面、物質面を分けない文化であろう。新世紀大辞典によって私の戸惑いも解決出来たようである。原文:1991(H03)12. (2005.11.03再:2009.11.06)

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